ヒトココとドローンを利用した山岳遭難捜索演習
- 2020.04.19
- 訓練・演習

3月29日労山宮城県連はドローンサポート東北の協力をいただき、石巻市の上品山(466m)などの頂を結ぶ石巻緑のハイキングロードにおいて、ドローンに搭載したヒトココなどを使った遭難者の捜索演習を行いました。
当初、同日開催予定だった石巻登山マラソンのスタッフとしての参加と、県連救助隊の遭難救助訓練を兼ねての計画でしたが、登山マラソンがコロナ対応により中止となったため、救助隊の捜索演習のみを開催しました。
ドローンを使用する本格的な捜索演習ということで、川嶋労山事務局長にも来ていただき、コロナ禍で来県できませんでしたがヘリココのAUTHENTIC JAPAN株式会社から、ドローンに搭載する中継機システムや配置する多数の子機を提供していただき、また大会のラン予定でもあった石巻RCの方々に子機をつけ捜索ターゲットとして走っていただいたり、新日本スポーツ連盟からも参加協力していただきました。前日参加者と合わせて60名程の参加でした。
当日の演習計画は、移動ターゲットを合わせて20点ほどのポイントを、ドローンや、車両や、歩行隊から、あるいは移動ターゲットを定点から待ち受けるとかの盛りだくさんの企画でしたが、朝から小雨やみぞれの悪条件となり朝の3回のフライトしかできず、他は前日設置した子機回収時の車両や歩行隊による探索、石巻山の会のハイキング隊による探索のみとなりました。
しかし、当日に取得できたデータは少しでしたが、前週の23日に行った予備試験などにより、多くの貴重なデータが得られ、当初予想を遥かに上回る能力が明らかになりました。大略して言えば、山地(山岳地)でも2㎞程度の探査及び大よその位置特定が可能であり、4㎞程度の探査(発見)の感触がつかめました。効率的な位置特定方法や飛行方法の構築が今後の課題となります。また、地上からの普通タイプの親機探査でも、林道を走る車両助手席から、反射波を拾い測定値が激しく変化するものの半数以上を発見でき、夜間や悪天時の捜索に有効であることが確認できました。
報告書としては、追加試験をまだ継続中ありまとまっておりませんが、今月中をめどにまとめたいと思っております。また、ドローンサポート東北様がドローンとヒトココ中継機を使った捜索がどんなものかを紹介するムービーを作ってくれYouTubeにアップされていますのでご覧ください。
ヒトココとドローンを利用した山岳遭難者捜索演習 https://youtu.be/V0U-g5sQUjk
(実施日:2020年3月29日 報告:県連救助隊長 橋田明良)
ヒトココ中継機のドローン搭載による遭難捜索演習・試験
目的
- 普及タイプのドローンに搭載して山岳地での捜索能力の検証
- 実用的な捜索技術の構築
得られた知見
- 密集した植林杉林などは、横方向からでは電波がほとんど遮断されるが、直上付近に行くことが出来てドローン操作に障害が無い距離であれば(麓側からの探索で1.6 km確認)探査と大よその位置特定が可能である。
- 多少の針葉樹が混ざっていても落葉した樹林帯であれば、遭難者直上の少し手前までの飛行により概ね2㎞程(確認2㎞)の探査と大よその位置特定が可能である。
- 草地などで障害物が無ければ、操縦者直上付近での飛行により、遭難者距離2km弱程の範囲での探査が可能である。
遭難者位置の特定
発見となっても位置特定方法が今後の重要な課題である。
- 直上付近までの飛行が可能な場合や、表示測定値が安定していれば表示距離や表示方向への最接近(いわばココドロサーフィンによって)により大よその位置の特定ができる効率の良い飛行方法(サーフィン方法)の確立が課題となる。
- ドローンの複数位置での位置座標とヒトココの表示距離、左右位置関係から地図上での特定方法が考えられるが、1回の試行では収束しづらい結果となった。(測定値が安定していない段階でのデータを使用した可能性大。ある程度近づくと変化の仕方が安定し、一旦静止させてから測定値をとると精度向上の可能性がある。)
- 飛行基軸線を作って飛行させ、操縦機の示す距離とヒトココ表示の距離で遭難者位置とらえる方法では、良好な結果を得た場合とそうでない場合があった。(座標位置利用以上に安定した状態での測定値が必要とおもわれる)
- 樹林帯にいる場合、地上からの高度が100m以上と高い(遠方からの操縦では近接は無理)ことや日陰で黒くつぶれる等、操縦機のモニターでは衣服を着せた人形を全く視認できなかった。
特に、飛行限界以上の距離部のターゲットの特定方法が今後の課題である。
尚、子機の設置高さは、地上から鉛直におよそ50cm程度を基本にした。(斜面や凸凹で厳密な高さでの設置は困難だった。)
演習実施の背景
2018年の山岳遭難者は、警察庁によると3129人であり、その37.9%もが道迷いです。携帯電話で救助要請ができれば良いのですが、山岳地では奥深いところや谷筋などエリア外の場合が多々あります。また、事故などにより自分からは連絡をできなくなっている場合もあります。
携帯した小さな子機(20gの発信機)を、親機(70gの受信機)で探索するヒトココという捜索機器があります。予定を過ぎても帰ってこない場合など家族や関係者からの依頼で、ヘリコプターから親機で捜索するほぼ全国の山域をカバーするココヘリという民間のサービスがあり、また34都道府県の警察航空隊や防災ヘリが受信機を導入しています。上空では電波が良く飛ぶことから広い山域を短時間で捜索ができ、各地で大きな成果を上げています。
しかし、ヘリ捜索は、天気や視界が悪い場合とか、夜間はできません。この場合、ヒトココを使っても、地上からの捜索となりますが、電波の到達距離が短くなることや、山陰には届かないとか、捜索者自体の速度も遅いですのでヘリ捜索に比べれば極端に効率が下がります。
そこで、地上捜索とヘリ捜索の間を埋めるものとしてドローンの使用が考えられてきましたが、通常の親機は、物理的に最低10秒に一回程度はスイッチを押す必要があることや至近距離から表示を見ている必要があり、普及タイプのドローンでは、捜索しながらの操縦は、なかなか厳しいものがありました。
今回、石巻登山マラソンで高度な技術を持ったプロ集団ともいうべきドローンサポート東北の参加によるドローンを使っての本格的な捜索演習を行うということで、親機を改造した新開発の中継機システム(ドローンに搭載する中継機=アンテナと操作するリモコン)をココヘリのAUTHENTIC JAPAN株式会社より提供していただき、この捜索演習となったものです。数回の予備試験や継続試験を実施中のものです。
Gallery
- ドローンに装着した中継機
- ベースを飛び立つドローン
- 中継機(リモコンとアンテナ)
- 位置表示中のリモコン
- 子機
- 捜索中発見時
- 演習地 水沼山周辺
- 石巻緑のハイキングロード
- 飛行軌跡
-
前の記事
宮城県勤労者山岳連盟のホームページを開始しました 2020.04.05
-
次の記事
石巻緑のハイキングロード 水沼山登山道整備等作業報告 2020.06.09

コメントを書く